Terrane Magazine · 第01号 · モンテモール・オ・ノヴォ, エヴォラ県, ポルトガル

Corte do Sobreiro

コルク樫の囲い地

本号の主題 九年

ひと季節ぶんの切り出し。煮る前に、半年のあいだ野天に積んで寝かせる。
ひと季節ぶんの切り出し。煮る前に、半年のあいだ野天に積んで寝かせる。

コルク樫は九年に一度だけ剥がれ、二百年ほど生きる。コルクを剥ぐ男は、同じ樹を生涯に おそらく五度扱い、そして次の代へ渡す。コルテ・ド・ソブレイロは九年を単位に時を刻む。 借金も、婚礼も、幹に塗られた数字も、すべてこの間隔に合わせて決まっていく。

00

The Ground

アレンテージョは準平原である。削られて平らになった地面だ。その下にあるのは古生代の 片岩と花崗岩で、三億年ほど前に褶曲して山となり、以後ずっと削られ続けてきた。残った のは、一日歩いても標高が家一軒分しか変わらないほど緩やかに傾いた床である。コルテ・ ド・ソブレイロは標高二一四メートルにあり、登るべきものは何もない。

土は薄く、酸性で、有機物に乏しい。雨は十一月から三月に降り、それ以外の季節にはほとんど 降らない。六月には地面が固結し、秋までそのままだ。これを耕して作物を取り続ければ、 一世代で痩せ果てる。

コルク樫はそれに耐える。根を深く下ろし、乾燥に適応し、火に——あるいは斧を持った人間に ——遭っても再生する樹皮をまとっている。モンタードとは、大規模に育つものが他に何もない 土地から引き出された答えだ。樹は一ヘクタールに四十本ほどまで間引かれ、各々が十分な水を 得る。その下には家畜のための草があり、秋にはドングリを求めて豚が放たれる。ひとつの 地面から三つの収穫があり、そのどれも大きくはない。

これは森ではないし、かつて森であったこともない。痩せた土壌との二百年にわたる論争であり、 九年という間隔は、その条項のひとつである。

井戸 積んだコルク 屋敷 巣箱 ヴェンダス・ノヴァス街道へ 九キロ 0 五〇〇 m
道から見た屋敷。九キロの土の道、井戸ひとつ、そして切り出したコルクを積む乾燥場。 それ以外はすべてモンタードである。
01

The Montado

モンタード。荷車が通れるだけ樹を離し、その下に家畜の草が育つだけの光を残す。
モンタード。荷車が通れるだけ樹を離し、その下に家畜の草が育つだけの光を残す。
この五月に剥いだ樹。次に触れられるのは、九度の夏を数えたあとだ。
この五月に剥いだ樹。次に触れられるのは、九度の夏を数えたあとだ。
ヴェンダス・ノヴァス街道から九キロの土の道。ここへ入る道は、ほかにない。
ヴェンダス・ノヴァス街道から九キロの土の道。ここへ入る道は、ほかにない。
02

The Calendar

剥いだ年の下一桁を、白い塗料で。どの幹にも入っている。モンタードの全体が暦になっている。
剥いだ年の下一桁を、白い塗料で。どの幹にも入っている。モンタードの全体が暦になっている。
左は今季剥いだ幹。右は数年前に剥かれ、灰へ褪せた幹。この差が、村の時の数え方だ。
左は今季剥いだ幹。右は数年前に剥かれ、灰へ褪せた幹。この差が、村の時の数え方だ。
03

The Cut

machado。刃が形成層まで届かないよう曲げてある。そこを傷つければ、樹は残りの生涯なにも与えない。
machado。刃が形成層まで届かないよう曲げてある。そこを傷つければ、樹は残りの生涯なにも与えない。
班は五月に来て、樹に樹液がめぐるあいだだけ働く。世界で最も高給の農業労働であり、最も替えがきかない。
班は五月に来て、樹に樹液がめぐるあいだだけ働く。世界で最も高給の農業労働であり、最も替えがきかない。
04

The Holding

白漆喰は毎春塗られる。前の年の上に、そのまた前の年の上に。
白漆喰は毎春塗られる。前の年の上に、そのまた前の年の上に。
屋敷はこの井戸のまわりに建てられ、いまだにこの井戸から出ていない。
屋敷はこの井戸のまわりに建てられ、いまだにこの井戸から出ていない。
窯はひとつ。売り物にならない端材で焚く。パンはコルクの副産物である。
窯はひとつ。売り物にならない端材で焚く。パンはコルクの副産物である。
巣箱は最初の剥皮から作る。瓶詰業者が引き取らない、粗いコルクだ。
巣箱は最初の剥皮から作る。瓶詰業者が引き取らない、粗いコルクだ。
05

The People

どの幹をどの年に切ったか——書かれた記録は彼女のものしかない。台帳はコルクで装丁されている。
どの幹をどの年に切ったか——書かれた記録は彼女のものしかない。台帳はコルクで装丁されている。
パン職人。彼女の窯は、手にしてからずっとコルクしか燃やしていない。
パン職人。彼女の窯は、手にしてからずっとコルクしか燃やしていない。
養蜂家。彼の巣箱は、樹のうち一度も金にならなかった部分でできている。
養蜂家。彼の巣箱は、樹のうち一度も金にならなかった部分でできている。
06

The Nine-Year Interval

  • 二十五年目の最初の剥皮で採れるのは cortiça virgem。粗く、ひび割れ、粒状材にしかならない。
  • 九年後の二度目もまだ質が悪い。三度目からようやく、栓になる滑らかな amadia が採れる。
  • 剥いだ幹には、その年の下一桁が白く塗られる。モンタードの全体が暦になっている。
  • 剥ぎたての幹は濃いオークル。一年ほどかけて灰褐色に褪せていく。
  • 剥ぎ手 tirador は、世界で最も高い賃金を得る農業労働者のひとつだ。形成層を傷つければ、樹は二度と戻らない。
  • 板は屋外に積まれ、半年ほど寝かせてから煮られる。

以上はすべて、アレンテージョで実際に行われているコルクの仕事である。架空なのはCorte do Sobreiroだけだ。

07

From Sobreiro

  • 数字の幹 Tシャツ

    衣類

    数字の幹 Tシャツ

    剥ぎ手が残す印を、背中に。無染色のコットンにプリント。

  • 雑誌

    TERRANE 01 — コルテ・ド・ソブレイロ

  • プリント

    数字の幹、No.1

    塗られた数字。一枚の写真、広い余白。年ではなく、数字で呼ぶ。

  • コルク

    コルクの水筒覆い

    羊飼いの cantil から。栓には粗すぎる、最初の剥皮のコルク。

  • 食品

    モンタードの蜂蜜

    コルクの巣箱の蜜。ラベルには剥皮の数字が入る。

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